森山安英 解体と再生

北九州市立美術館本館、2018年5月19日〜7月1日
現代作家美術館回顧展、森山安英展実行員会(北九州市立美術館、毎日新聞社
鑑賞日:6月21日(木)

描くことを否定することすら否定するために、描かずに画面に光を出現させる。絵具は表面を流れ、止まる。粒子は重力に従いそれぞれで運動しており、それは偶然を装った必然の現象でしかない。その裂け目から現れるものもまた光であり、全方位に放射して形を伴わない。形は否定されるがゆえに肯定される。原初の形を求めるというロマンティシズムは否定されなければならない。身体性を伴うゆえの作者の主体性も否定されなければならない。現れる形は、任意の容器に水が溜まっただけであるかのように、無意味でなければならない。描く意思を、描く意思の否定によって表す。その画面に定着する行為と物質の摂理は、描かれたものが指し示す対象を持たず、放射していた光を再び内に取り込み、自らの形が発生することを期待する。しかし、それはかなわない。仮初めの容器を持つことが、すべての始まりであるから。

森山安英 解体と再生

森山安英 解体と再生