長谷川利行展 七色の東京

府中市立美術館、2018年5月19日〜7月8日
近代洋画家回顧展、公立美術館巡回、企画協力:一般社団法人INDEPENDENT
鑑賞日:6月22日(金)

都会の喧騒の中に生きる。喧騒を喧騒として自分の生のなかに取り込む都会を生きることを目的として、郷愁を忘れ、変化に身を委ねる。その変化、移ろいやすく、時間の蓄積が価値とならないものたちを、刹那を愛で、自らも刹那のなかに埋没させるには、そのなかにあって自らは不動でなければならない。定点として不動の眼に写る都市のざわめきは、不動の眼が捉えた不動の描写によって、固定される。身体は街を彷徨い、動き続ける。しかし、眼から入った光景を描写へと変換する技術は、戸惑いもためらいもなく、あらかじめそうでしかなかったかのような手つきで、線が引かれ、色が重ねられていく。本当にためらいがなかったのだろうか。そんなはずはない。決定すべき線を求めるために、幾度も引かれる無数の線が、眼にした光景の移ろい、力動、音と匂いを、画面に定着させる。その手は速くそして正確であるために、描く主体には遅く感じられ、より速さを求めるしかなかった。

長谷川利行画文集 どんとせえ!

長谷川利行画文集 どんとせえ!