ボイス+パレルモ

埼玉県立近代美術館2021710日〜95

現代海外物故作家二人展、公立館2館巡回

鑑賞日:817日(火)


世界のどこかに一人取り残されたかのように、私の声がどこにも届かない。実際には目の前に相手がいて、返事もしてくれる。孤独だとも思ったこともあまりない。だから、今、自分が立っている場所を、もう少し信じてみたらという人たちもかつてはいた。その人たちは皆何処かへ消えてしまった。挨拶もなく。だから、この場所でただじっと前を見ている。誰かが来ることを待つわけでもなく。目の前の空気が動くのを感じている。

 ある時、この場所に標を付けることを思い立つ。私の存在の証ではなく、この場所を示すための標。それは決して私の傷と見えないように、注意深く形と色と動きを選択しなければならない。時には信号が強すぎて標として機能しないこともあるが、それでもいい。壊れたり、意味を失ったり、誤読を誘発することも、標の機能のうちの一つだから。その光を見た人たちは、もう一度集まってくるだろうか。光ではないものに変身させていることに気づくだろうか。きっとこの場所に来て標を拾いあげるだろう。そして放擲するだろう。その拾いあげた手のひらに標が刻まれたことは、知られてはいけない。