県立神奈川近代文学館、2017年3月25日〜5月21日
近代俳人回顧展、公立館自主企画単独開催
鑑賞日:5月3日(水・祝)
僅かにしか動かない身体。その一部は強張り自分の意志の通わない部位と成り果て、さらに身体の内側にいたっては元より預かり知らぬところで、意志に反する何かが進行している。とはいえ眼だけはなんとか機能をまっとうしており、物事を認識する力は研ぎ澄まされていく。窓の外の出来事、それは人の動きや人の動きが為す何事かというよりも、植物を通して認識する時間の経過を読み取っていく。読み取った時間が、私の生の時間であり、それを書き留めることが、私の生の証しとなる。私が見るものは光と影。物のかたち。花が咲き虫が這い私が息する。ガラスを通した光はさらに眩く、空気は澄む。私と世界は、薄い膜で隔てられ、私自身も私の肉体と意識と身体の薄い膜で隔てられている。それが一体化したのはいつだったか。初めからすべてが分かたれていたがために、私は世界と結び付いているのではないか。
- 作者: 正岡子規
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1984/07/16
- メディア: 文庫
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