田淵安一展―知られざる世界

神奈川県立近代美術館鎌倉、2014年7月5日〜9月15日
現代物故作家回顧展、収蔵品展
鑑賞日:8月9日(日)

祖国を離れて祖国を想う。誰しも同じ想いにふけり時間を過ごすことだろう。そして彼の地で祖国との違いを分析する。いずれも同じような大地に同じような樹々が育つ。あくまでもようなであり、同一ではない。しかし、生命は等しく、樹々は黙して語らず風に揺れ葉を伸ばす。
風と光と樹々のざわめきを絵画に定着させるために、祖国を想う。目の前の景色を見つつ、思念は遠い祖国に至る。その距離を、物理的な距離を物質に変え、画面に挿入するために必要だったのが、祖国の手法。絵筆を持つ腕は異国にあるが、その身体の基盤はあえて不確かな大地に立つ。
空間は色彩に溢れ、そして色彩を失っていく。空間は身体性に満ち、そして身体性を失っていく。異国の形象は祖国との通路としてある。形象の目指すところは空間のどこにあるのか。手前か奥か。

西の眼 東の眼

西の眼 東の眼