吉岡徳仁 スペクトル

資生堂ギャラリー、2017年1月13日〜3月26日
現代デザイナー画廊個展
鑑賞日:3月23日(木)

目に見えるものはすべて光。目に見えるものから意味を剥ぎ取り、見えるものの純度を上げていくためには、光の純度を上げる。光の純度を上げると光は光でなく、さらに光を浴びる個々の人物の感情へと吸収されてしまう。光とは記憶の別名となる。目で感じる感覚が、感覚としての快不快を呼び覚ますから、それを超えていくために純度を上げ、網膜というフィルターにかからないようにしているのだが、それは光が光であることを失う地点となる。そのために光の純度のレベルを保ちつつ、網膜に訴えることとなる。それは網膜というフィルターの持つ機能を、生きていくうえで過剰に依存せざる得ないこの器官を、他のあらゆる動物より劣化した器官と同じ役割を持たせることを意味する。劣化した目によってものごとを見ようとするのではなく、少ない情報を感じるように読み取る。そこで発生する感情は、退化ではなく、身体を未開に還すことを促す。

吉岡徳仁 クリスタライズ

吉岡徳仁 クリスタライズ