生誕120年 安井仲治 僕の大切な写真

東京ステーションギャラリー、2024年2月23日〜4月14日

近代物故写真家回顧展、公立私立美術館3館巡回

鑑賞日:3月26日(火)

 

写すということを写るということを考える。被写体として印画紙に定着された像は、写したいと願った像と、どこか違う。写したいものを写すための技術が、問題になるのか。その前に、写したいものとはなにか。さらには写るということは、どういうことなのか。その問いを重ねつつ、像を生み出していく。様々な手法で。様々なものを参照して。写したいものは、目の前にあり、見えているその光景ではない。その光景の一部を切り取ったところで、その一瞬の光を固定したところで、それは写したいものとは異なっている。写したいのは、世界に眼差しを向ける私の感情であり、私がなにを見ているかだ。その自問自答を繰り返していくなかで、新たな問いが発生する。写されるということは、どういうことなのかと。世界は切り取られ、像となることを望んでいない。しかし、像は浮かびあがってしまう。写されるということへの自覚もないまま。しかし、写された瞬間から、被写体の存在とは関わりのない物語りが始められてしまう。