畠山直哉展

東京都写真美術館、2011年10月1日〜12月4日
共催:産経新聞
現代作家個展、単独開催
鑑賞日:11月27日(日)

被写体を写真作品として表現することとその技術の関係を分析するかのような作品を発表してきた畠山直哉の活動のなかで、自然をテーマに構成した三回目の大規模な公立美術館での個展。静謐な風景写真の姿を有し、かつ、自然をフレームにとらえシャッターを切ることの意味を確認する。写すことによって自然を検証するかのような作業は、その写された自然のタイポロジー、時間の経過の定着という写真ならではの表現=分析のための記録、とみなすことができる。しかしながら、そのような写される対象の固有の歴史/大きな歴史の一部と考えられる作品群は、たとえば、写っているが目に見えない大気と人が発生させることで存在する水蒸気の対比によって、物事の存在論へとむかう。そして、それは神秘主義をまとった雰囲気=作者の私性へと収斂しがちであるが、そうではなく自然科学が、そして写真という技術が前面に現れる。
あくまでも写真という技術に忠実であろうとする作家が、改めてその技術のなかの記録というテーマに取り組むとき、現れてくる時間の複層性もまた、個人のスケールを超えた大きな時間との関係のなかで視覚化される。