宮崎啓太「逆さのバベル」

LOKO GALLERY、2016年11月18日〜12月18日
現代作家画廊個展
鑑賞日:12月8日(木)

澱んで混迷した世界に異形の花が咲く。そこではその本体と同一の遺伝子を持っているとは想像もつかないような、形態が現れ、結合する。本体の出自に則り、本体との連続性を保った形態の花をつけることは可能だったはずだ。しかし、本体の異形を正統に見せるかのごとくの異形ぶりを発揮する。その異形の形態は規則正しく整然としている。数学的な理知によって花の全体は構成される。異形とは形の問題ではない。ただ、そこで咲いてはいけないということが、その存在のあり方が、その花を異形へと押しやる。継ぐべきものを誤ったのではない。継ぐべきものを精査したうえでの選択が、その形態を産み出した。とすれば、異形もあらゆる展開の振れ幅の一局面でしかないのだが、異形の域に入らなければ、引き継いできた系譜に変化は起きない。変化が起きないとその系譜は途絶える。整然とした形態が異形と映る澱みと混沌に、身を浸し全ての穴からその禍々しさを吸い込み、ゆっくりと胎内に含んだのちに、少しずつ少しずつ組成を変えて現れる。花はそのように咲く。