川島清 彫刻の黙示 路傍・淵・水量

川越市立美術館、2016年7月23日〜9月11日
国内現代作家個展、公立館2館巡回
鑑賞日:9月3日(土)

眼に見えない時間を、時間が作り上げた形を換喩として、ある場所に置く。その置かれた時間は、それだけでは時間にならないので、やはり時間が築きあげた素材を人の手で加工した物質を添える。人の手は時間に逆らうものではなく、時間の存在を追認し、そして時間には逆らわない。時間がなんであるかについても言及しないために、それぞれの素材を置く所作は、道理ではなく、素材に委ねることもなく、その一瞬という時間に決定され、そして静止する。静止のうちにも時間は流れる。むしろ静止のなかの時間を、現前させるために物質は置かれる。その手が施した作用は、物質を変えることはなく、物質のなにかを暴くこともなく、物質のありのままを提示することで、施した手の意味は失われる。確かに人の手が関わったものであるにもかかわらず、整然と置かれることと、物質が示す乱雑さに違いはなく、時間は止まる。