生誕200年記念 伊豆の長八ー幕末・明治の空前絶後の鏝絵師

武蔵野市立吉祥寺美術館、2015年9月5日〜10月18日
近代物故作家回顧展、自主企画単独開催
鑑賞日:9月26日(土)

技術が創意をうながし、表現を開く。その表現は作者のためではなく、他者のためでもなく、腕の先から手の先から未知の世界へと向かう。かつて見たものを、同じ方法ではなく、自分の方法で再現するにもその表現と方法の乖離が如実に現れる。その現れを引き受け、むしろ積極的に生かすことで、方法が表現を超え、かつて見たものと、見かけにおいては近似し、役割においては同等で、歴史的には異形としか呼べないものとなる。しかし、その表現としての異形が、方法における正しさを保証する。そこでは確実に、そのような造型にしかなりようのない必然性がある。表現の模様、技法の模倣に囲まれるなか、模倣のみでは成し得ない積極的で無自覚な混乱、しかしその方法においては揺らぎようのない、がその表現に強度を与える。その強度ゆえ忘れられることとなり、今なお居場所がない。

伊豆の長八: 幕末・明治の空前絶後の鏝絵師

伊豆の長八: 幕末・明治の空前絶後の鏝絵師