種村季弘の眼 迷宮の美術家たち

板橋区立美術館、2014年9月6日〜 10月19日
現代ドイツ文学者回顧展、自主企画、共催:美術館連絡協議会
鑑賞日:9月20日(土)

美術はかたちを組み合わすことで作られた言葉だから、そのかたちとかたちに込められた想いと、そこで発生する物語をもう一度読み解いていこう。そのかたちも想いも物語も主人公は人でしかない。人は食べ、眠り、生殖し、笑い、怒り、泣き、途方に暮れる。それらはすべて、自分がそこには存在していることを確かめる作業となる。他者の存在を確認するためにも、物語を形成し、自己と他者を関係させる。世界を単純化するには、人から感情を奪うしかない。世界を複雑にするには感情を圧し殺すしかない。複雑な世界に複雑に言葉を添えて目に見えるかたちを与えて理解するということを理解する。私は世界ではないことは重々承知だ。私は世界の一部ではあるが、私は世界と同じように複雑であり、そして分かりにくいが、単純な一面も持っている。単純であるということは単純には考えらないから、やはり世界はかたちが複雑に結びついたかたちで表現される。

種村季弘の眼 迷宮の美術家たち

種村季弘の眼 迷宮の美術家たち