あなたの肖像ーー工藤哲巳回顧展

東京国立近代美術館、2014年2月4日〜3月30日
物故現代作家個展、公立館3館共同開催
鑑賞日:3月1日(土)

芸術作品を創作するのではなく、自己を再創造する。創造され目に前に異物となって現れた自己は、わたしであって、わたしでない。さらに、わたしを再創造するにも、創造するための器官がない。わたしの情報は複数のコードのなかに組み込まれており、無数に錯綜するコード、のちに一つでしかなかったと気づくにしても、をどのように再生産すべきか。外部要因による突然変異を受け入れるか、コードの内部で自己複製するか。自己複製のシステムは、コードにプログラムされていたことではあるが、そのプログラムが不完全であるためか、やはり複製する器官が欠如しているためか、常に失敗に終わる。もしくは、複製されるべき自己が不完全で、複製は完成されていたのかもしれない。そもそもそのコードで読み込まれるべき自己というものは、存在するのだろうか。同語反復に自ら没入し、複製という名の創造、それは創造というものが複製でしかないという表明でもある、が複製による微妙な差異を表しつつ、繰り返される。わたしの情報は、時間を仮象し距離を仮象し、複製物のなかに肉体を消し去ったわたしの存在を、次のコードへと変貌する。