平櫛田中展

小平市平櫛田中彫刻美術館、2012年9月9日〜10月21日
共催:平櫛田中展実行委員会
近代物故作家回顧展、3館巡回
鑑賞日:9月27日(土)

彫刻の素材としての切りだされた木材のなかにどのようなフォルムが秘められているのか。それはかつての木の姿の層でしかないことを直截に表現する時代よりはるか以前。多くの者は、木に宿るのは木の精神であるとして、木材が自ずとフォルムを導いてくれると述べつつ、精神の似姿を形作るのに苦心する。
理想のフォルムを予め油土で作り上げ、それを素材である木へと埋め込んでいく。その作業は、フォルムを中心に視るならば、単なる素材の転換となるのだろう。しかし、フォルムの優位を唱えるならば、素材は転換される必要があるのだろうか。フォルムの転写は、木材の持つ精神に新たな命を吹き込む作業といえるか。加工されるために抽象的な形体へと規格化された素材を、彫刻として蘇らせるために、フォルムを注入する。そこに宿された、まだ見ぬ、しかし確実に認識している、フォルムを、新たな生命として削りだす作業。彫刻における二つの根源的な手法が、二重に捻じれながらネガとポジのように組み込まれた彫刻。