マックス・エルンスト―フィギュア×スケープ

横浜美術館、2012年4月7日〜6月24日
共催:「マックス・エルンスト―フィギュア×スケープ」展実行委員会
海外物故作家個展、3館巡回
鑑賞日:6月11日(月)

表面の厚みは測れるだろうか。表面を物として把握できるだろうか。絵画が厚みを持たない表面のみでできたイリュージョンだとするならば、そしてそのイリュージョンにこそ世界が凝縮されているのだとしたら、世界のあらゆるものの表面にこそ、そのイリュージョンの秘術が隠されているのだろうか。だから画家はあらゆる物体の表面を計測し、写し取らなければならない。その表面を集め、組み合わせ、もう一度世界を回復しなければならない。表面の跡。背後にかつてあったであろう物体を想起させつつ、その表面の、厚みのあろうはずもない、その影のみが現前する。印刷物もまた厚みを持たない表面の影としての現れである。その影の組み合わせは、新たな奥行きを持ちえず、もうひとつの表面として定着する。そもそも、絵画に奥行きはあったのだろうか。それとも表面の厚みのなさにしか奥行きは産まれないのだろうか。層すらも形成しない、他との関係性を拒絶した薄さ。その認知し得ない奥行きのなかで絵画は標本化される。表面だけの物体に囲まれた出口のない森のなかで、森の姿をすばやく写し取らなければならない。森すべてが石として固く閉ざされる前に。