イケムラレイコ うつりゆくもの

東京国立近代美術館、2011年8月23日〜10月23日、共催:三重県立美術館
現代作家個展、2館巡回
鑑賞日:10月15日(土)

垂直に伸びるものの重さの等量が、真下へと発生する。垂直に伸びるもののいくつかは、自らの重みに耐えきれず、途中から身を曲げる。垂直に伸びる姿形が、一見、その垂直性ゆえに重さを感じさせないとしても、その垂線上に真下へと向かう力がいやおうにも働き、その重さを顕わにする。重みに耐えきれないものは横たわる。横たわってなお重力を無効にするかのごとく、空洞を示す。横たわる形の上部に大気が圧力をかけ、自身の重みと相まって、地表から地下へとその存在を伝えていく。その時に横たわる形の内部に存在する空、空洞、空虚、虚ろ、は、無ではなく、空(から)が充満し、その密度が重さとなり、真下へと進行する。空を孕んだ形状は、外縁である容器としての形状と同様に、もしくはそれ以上に、内部の空が重要な表現となっている。中心の不在と周縁にまつわる問題ではなく、中心の不在が不在として表現されていると考えるべきだろう。そのために、抜け殻のような形状は大きく開口部を見せ、内部の空は塊として出現する。外部と内部の空間の連続せず、作品と環境のあいだの流動は起きない。確固たる不在が凝縮した量塊。事物がどのように存在するかではなく、すべてのものがいかに不在であるかが問われている。