横浜美術館、日本郵船海岸通倉庫ほか、2011年8月6日〜11月6日
大型国際展
鑑賞日:10月3日(月)、10月11日(火)
日本郵船海岸通倉庫会場1階に展示されていたカールステン・ニコライの《fades》についてのみ。
光の作品。ブースのなかには薬品?により薄く靄がかかり、プロジェクターから投影される光の帯が見える。その光の動きとともにノイズ(驟雨の音のようでもある)が変化する。
抽象絵画の発生時から、抽象形体の変化による動画制作は試みられている。音楽との融合もまた、その試みと近しいものであったはず。色と形体は感情を結びつくものとして考えられ、新たな言語、世界共通語の探求へと続くか。しかしそれは、形体や色にあらかじめ意味を付与する限りは、成功しない。
白い光が描く線、格子は、意味を持ち得る形を形成する前に変化し続ける。奥行きを表すように見えることもあるが、空間の表現ではなく、あくまでも壁面上の光と影の移動のみが意図されている。投影されていることを示す壁面に到達するまでの(こちらもまた変化し続ける)光の帯が、希薄な抑揚を保ち流れ続けるノイズと複合し、壁面に描かれる模様には意味がなく、それが光でしかないことを確認させる。メッセージを設定せず、また見ているものに感情の起伏を生ませず、求めず、ゆるやかな変化のなかで鎮静化へと向かわせる、情報としての光。光は情報が情報であることのみを表現するために、壁面に投影される。
従来より繰り返し試みられていた表現が、現代の技術によってスケールと精度を獲得し、かつアナログな(=日常や普遍と近しい)様相をまとい提示されている。
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