イ・ブル展:私からあなたへ、私たちだけに

森美術館、2012年2月4日〜5月27日
現代海外作家個展、単独開催
鑑賞日:4月16日(月)

歪んだ肉体から神経器官が露出する。赤く染められ、皮膚の保護が失われた肉塊は神経が露出している。その痛々しさは、変型や結合による異形さゆえではなく、神経の露出による。その神経器官は過度の露出により、自己増殖を繰り返し、強度を増していく。肉体を離れ意思を持って動き始める神経繊維。肉体を置き去りにするかように、地を這い、空中へと触手を伸ばす。肉体と皮膚は神経を保護するためだけに存在する殻と化す。殻と神経細胞で成り立つ物体は、生命の前提を欠いてしまったため異形とすら呼ぶことはできない。消化器官が消滅した神経のみ存在する物体。触手によって得た情報のみを扱う物体。そして得た情報を自ら処理する器官はない。
嘔吐するのは、体内に入った物質が体に適合せず、身の保全のためあえて摂取しないのではなく、それがどのようなものであろうと口腔から先に、消化するための臓器が存在しないためだ。行き先が失われた情報は、情報のまま吐き出される。生命は維持されず情報は伝達されない。

イ・ブル 私からあなたへ、私たちだけに

イ・ブル 私からあなたへ、私たちだけに