金沢健一 出発点としての鉄 1982-2011

川越市立美術館、2011年7月30日〜9月25日、共催:美術館連絡協議会
地元現代作家個展、単独開催
鑑賞日:9月24日(土)

地下1階の展示室で、80年代から近作までの彫刻作品を展示。
初期の作品は、床起き、壁面設置の作品とも、作品が中心へと凝縮せず、視線が外へと伸びるよう、開いた形状。量塊を持たない。鑑賞者の視線の動き、体そのものの動きとともに作品の存在がある。唯一の視点を持たず空間とともに変化することが強調されていることから、彫刻らしさを見ることもできるが、確固たる量塊を持つというもう一つの彫刻らしらから逃れることも強く意識されている。
その後箱型になっていくも、部分をずらし、開きの端緒が現れている。パーツの複合であるとともに、一度では全体を把握できない。
法則を設定して形状を定めたとしても、空洞を孕む箱型と変化しても、基本的な構造は変わらない。
その形状を決定するルールがなんであれ、部分と全体の関係が相互補完ではなく、分離するためにある。それは展開のための分離ではなく、全体を形成しようのない欠如の表現と見るべきか。
視線による全体の再構築の困難さは、時間の経過とともに全体性の把握へと向かうのではなく、その不可能性を際立たせる要因としてある。