加茂昂 境界線を吹き抜ける風

LOKO GALLERY2019426日~61

現代作家画廊個展

鑑賞日:529 日(水)


人は存在する場所について無自覚ではいられない。そしてまた、存在する場所に縛られるだけでは生きていけない。その場に立ち、また自由であることが求められるとしても、そんなことは埒外のものとして生きていくしかない。その生の在り方を描く時、場所は場所であって場所でなくなる。人は人であって人でなくなる。どこでもない場所で、誰でもない人が、気配だけを残し佇む。気配を取り囲む光は眩く、すべての事物を等価に照らすようだが、そこに佇む人は影となって現れる。生きるということは、影を生きるということであり、影から世界を見ることでもある。その光の反射のなかに、孤独は成立しない。個が消滅した世界では、人は個ではなく、全体となる。その世界のすべてを内側に取り込み、反転させた世界のなかで、光を影として生きる。